思い出のマーニー 感想と考察 6 (原作の後半、祖母への憎しみ、魔法の輪)
※以下、ジブリの新作アニメ「思い出のマーニー」のネタばれが含まれています!!※
原作ではどのように物語が進むのでしょうか?
以下にその概略を示します。
【原作の後半】
アンナ、リンジー家を遠くから観察するも、リンジー兄妹につかまる
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アンナ、リンジー家と親しくなる
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アンナ、浜辺で「マーニー」の文字を発見
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アンナ、プリシラからマーニーの日記を見せてもらう
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アンナ、マーニーのボートの存在を知り錨を盗む
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アンナの養母、ロンドンから湿地までやってくる
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アンナの養母、ミセス・リンジーとお茶。アンナの過去を語る。
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アンナと養母の和解
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アンナ、錨を盗んだことをミセス・リンジーに謝罪
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ギリー(映画の久子)再登場。マーニーの日記を読み、マーニーの過去を語る。
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ミセス・リンジー、アンナがマーニーの孫だと気付く
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アンナ帰宅(の直前で物語は終わる)
原作だけのエピソードとして、マーニーのボートが湿地屋敷で発見されます。そのボートの中に錆びた錨があるのですが、アンナはそれが無性に欲しくなり、リンジー家に無断で盗んでしまいます。
ギリーは映画の久子にあたります。ミセス・リンジーの友人で、白髪の老人です。そしてマーニーの友人でもありました。
大きな違いとしては、映画では養母が持ってきた幼いアンナが持っていたという湿地屋敷の写真を見て、アンナは自分がマーニーの孫だと気づきますが、原作ではミセス・リンジーが気づきます。
もう一つの違いは、アンナと養母の和解は、映画ではマーニーの過去をしった後ですが、原作ではその前ですね。ドラゴンボールで例えるところの完全体に一足早くなったといえるでしょう。
原作でのアンナと養母
原作でアンナがどのように描写されているかについて説明します。
映画のアンナは養母のことを「メェメェ鳴くヤギみたい」と呼んでいます。養母との心の亀裂が若干大きめな印象です。
原作でのアンナは心にわだかまりを持ってはいるものの、大切にも思っているという描写がされています。
角川版 P22
「つまるところ、やっぱりあの人のことをほんとのお母さんみたいに、大事に思っているんだよね。そうだろ?」
「もちろんです!」アンナは言った。「それ以上です」
養母へ手紙を書く時にも以下の表現があります。
角川版 P25
アンナはようやく「愛をこめて」ではなく「何トンもの愛をこめて」と、書き(略)
意外と、養母との関係は良好のようですが、複雑な心境もあるようです。
角川版 P25
いつもいつもミセス・プレストンに対してやさしい気持ちでいられるか、アンナは自分でもまだわからなかった。
ミセス・プレストンは養母です(ミセス・リンジーとの違いに注意)
しかし、映画版と同様に例の「養育費」の問題がアンナを苦しめます。
マーニーに自分の苦悩を打ち明けるアンナ
角川版 P151
「(略)あのふたりが私の世話をして、いろいろやってくれるのは、わたしを自分達の子供みたいに思ってくれているからだと思っていた。でもちょっと前に、知っちゃったんだ。(略)」「あの人たち、わたしの世話をするためにお金をもらっているって」
お金のことを直接は養母に聞かないアンナ。しかしそれとなくヒントを養母に与え続けます。
角川版 P152
「それからも、お金のことを何度もきいてみた。(略)ミセス・プレストンがほんとうのことを話すチャンスを、できるかぎりつくってあげたの。でも話してくれなかった(略)」
お金のことを知ったアンナは「もう前と同じようにはいかなかった」と告白します。
角川版 P153
「ミセス・プレストンには、どうしてもほんとうのことを話してほしかったの。わたし、あんなに何度もチャンスをあげたのに」
どうやら、アンナが養母を心の中で愛しているのは間違いないようです。しかし、お金のことを知ったせいで、それを養母が隠していると感じて激しく苦悩しています。
母と祖母への憎しみ
映画と同様に、母と祖母への憎しみを感じているアンナ。
角川版 P149-150
「ううん、おばあちゃんなんてきらい。それにお母さんもきらい。みんな大っきらい。それだけよ・・」
マーニーは困ったような目でアンナを見た。「だけど、お母さまが事故でなくなったのは、お母さまのせいじゃないわ」
アンナはけわしい顔になった。「だってお母さんは死ぬ前に、わたしを置いていったんだよ」アンナは言い返した。「旅行に出ちゃったんだから」
(略)
「おばあちゃんもわたしを置いていった。出ていったの。もどるって約束したくせに、もどってこなかった」
(略)
「わたしをひとりぼっちにするなんて、ひどい。ずっとそばにいて、面倒を見てくれなかったのもひどい。置き去りにするなんて、ずるいよ。ぜったいに許せない。おばあちゃんなんて大きらい」
激おこのアンナ。置いて行かれることに、かなりのトラウマがあるようです。