思い出のマーニーをふりかえる3

映画での魔法の輪


話がだいぶ原作に集中してしまったので、少し映画版の話もしたいと思います。


原作でのアンナは、本当は他人と仲良くなりたいのに、相手のほうがアンナに関心を持ってくれずに仲良くなれない女の子だと描写されていました。


その原因が分からないアンナは、自分が目に見えない「魔法の輪」の外にいると感じており、その失望を「ふつうの顔」をして隠そうとします。


では、映画での杏奈はどのように描写されていたのでしょうか?


他人を毛嫌いする極度に自閉的な女の子?


いいえ。


映画でも原作と同様に杏奈は「本当は他人と仲良くなりたい女の子」として描写されていたように思えます。


まず映画冒頭で、あの中二病全開キャッチーな台詞があります

この世には目に見えない魔法の輪がある。輪には内側と外側があって、私は外側の人間。


そして、その直後に、教師と思われる男性が杏奈に絵を見せるように話しかけます。


最初は戸惑う杏奈。


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しかし次に見せる表情は・・・


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笑顔です。しかも少し頬を染めて胸をトキめかせています


ここでは他人と触れ合うことに戸惑いはあるものの、心の奥底ではそれを望んでいる杏奈の姿が描かれています。


本当は誰かに自分の絵を見てもらいたいのです。


しかし!


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教師は子供の泣き声に気を取られて、杏奈の絵を見ずに離れて行ってしまいます。


彼は本心から杏奈の絵を見たかったわけではないのですね。


杏奈はこのショックが原因で喘息の発作を起こしてしまいます。


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杏奈から人を遠ざける魔法の輪。


杏奈が相手と友達になりたくても、相手のほうがすぐに杏奈から興味を失ってしまう・・・。


まさに原作と同じ杏奈の姿が映画でも描かれています。


杏奈にはこうなることが最初から分かりきっていました。


だから、杏奈は人と触れ合うことを拒絶するのです。


角川版P13

ブラウン先生は歩きまわるのをやめ、アンナがベッドでのどをヒューヒュー言わせながら「ふつうの顔」をしているのを、なにやら考えながら見つめていた。


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杏奈は「ふつうの顔」をして自分の感情を隠すしかないのでした。


太っちょブタの信子


では、太っちょブタの信子に対しては、あなたはどのような印象を受けたでしょうか?


杏奈に優しく手を差し伸べる信子と、それを拒絶する杏奈?


いいえ。


ここでも杏奈は「本当は信子たちと仲良くなりたい」女の子として描かれていたように思えます。


最初、信子と七夕祭りに行かなければならなくなったことに気を重くする杏奈。


信子たちと歩いている姿も、沈んでいるように見えます。


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結局自分は他人と仲良くなれるはずがない・・・。


杏奈にはそれがわかりきっているからです。


そんな杏奈に話しかける信子。

「杏奈ちゃんはどこから来たの?」
「札幌です」
「いいなぁ都会で!お買い物いっぱいできるのね!」


会話成立!


この直後に杏奈の表情に変化が現れます。


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笑顔!


そう、信子の後姿を見ながら杏奈は笑顔を浮かべています。


「この人となら、友達になれるかもしれない・・・」


きっとそう思ったのです。


しかし!

信子「でもどうしてこんな田舎にきたの?」
杏奈「えーっと・・・」
女の子「なにこれ?信子ちょっと来てよ!」
信子「えっ?なになに!?」
杏奈「・・・」


信子は杏奈への質問など忘れて女の子の方に行ってしまいます。


信子は本心では杏奈にあまり関心がないのですね。


結局はうわべだけの優しさにすぎないのです。


期待を裏切られた杏奈。


彼女にはこうなることは最初から分かりきっていました。


杏奈はその失望を「ふつうの顔」をして隠すしかないのでした。


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そして同じことがもう一度起こります。

信子「でも杏奈ちゃん。ふつうってなあに?」
杏奈「それは、つまり、えーっと・・・」
信子「あっ!杏奈ちゃんの眼の色!」
杏奈「・・・」


またしても、杏奈の答えから興味を失う信子。


ここにあるのは


杏奈と友達になろうとする信子とそれを拒絶する杏奈の姿ではありません。


このシーンで本当に描かれているのは


本心では信子と友達になりたかった杏奈と、実は杏奈に全く興味など無い信子の姿です。


自分に興味なんてないくせに、友達になりたがるフリだけして、自分の心を踏みにじり続ける信子・・・。


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いいかげんほっといてよ。太っちょブタ!


杏奈にとって、信子は結局「魔法の輪の向こう側にいる女の子」だったのでした。


つづく