思い出のマーニー 感想と考察 21 (読書感想第8〜9章)

※以下、ジブリの新作アニメ「思い出のマーニー」のネタばれが含まれています!!※


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第8章 ペグのおばさん、ビンゴに行く


 さてさて、サンドラと大喧嘩した日の夜、ついにアンナとマーニーの出会いが訪れます!


 その夜はペグ夫妻はそれぞれ外出してしまいアンナは1人でお留守番なのですが、おばさんが用意しておいてくれた夕食を1人で食べてからアンナは再び湿地に出かけます。時刻はまだ夕方で、水平線が夕日で赤く染まっています。


 岸辺に行くと一艘のボートを発見!そうですマーニーのボートです。映画では水色っぽい色のボートでしたが、色は「みがきあげられたクルミ色」。新品のボートでへさきには小さな銀色の錨が置いてあります。この錨は後編でアンナが古いボートから盗み出す錨ですね。その時はサビ付いて黒ずんだ古い錨になっていたのですが、この時はまだピカピカです。映画と違ってロウソクは置いて無さそうです。


 大胆にもボートに乗って湿地屋敷に向かうアンナ。ちなみにボートを漕いだことは一度もありません。


 するとどうでしょう!ボートは漕がずとも湿地屋敷のほうにドンドンと進むではありませんか!


 こいつは楽ちん・・・って、あれ? 進み過ぎのようです!ボートは湿地屋敷の前を通過しようとしています。しかも目の前には陸から水の中に突き出ている塀が! アンナ危うし!


 するとそこに颯爽とマーニー登場! 「早く!ロープを投げて!」


 このシーンですが映画原作では少し違うようです。映画では次のようなシーンでした。


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 映画ではアンナのボートは湿地屋敷の方向につきすすみ、その状態でマーニーにロープを投げています。でもちょっと不思議ですよね。ボートは湿地屋敷に向かっているのだからロープを投げる意味がよくわかりません。杏奈もロープを投げる暇があるなら、むしろ衝突を避けるための措置を取るべきだったのではないでしょうか?


 しかし原作では以下のように描写されています。


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 湿地屋敷の前を通過しつつあるボート。しかしボートの前には陸から張り出ている塀があり、衝突しそうになります。これならマーニーが「ロープを投げて」というのも理解できます。


 映画では入江があたかものような形をしていましたが。原作ではのような形をしているので、この違いが生まれたようです。

第9章 女の子とボート


 ついにマーニーと遭遇したアンナ。でも「大丈夫?」と聞くマーニーに対して、いきなり「普通の顔」モードが炸裂!「普通の声」で「うん」とだけ答えます。


 その後まず最初にアンナがやったことは「相手が本当の人間か?」というチェックです(笑) そういえばアンナは湿地屋敷の住人を妄想想像しては「本当の人間のはずがない」と思い込んでいましたねぇ。マーニーも何故か同じことを思ったらしく、初対面にもかかわらずお互いの体を触りまくります!日本ではちょっと考えられませんが、まあイギリスの文化なのでしょう。


 お互いに「本当の人間だ」と確認して笑い合う2人。アンナが笑うのは小説ではこれが初めてのようです。しかしここでちょっと問題が。アンナの手がベトベトだったのです!


 夕食に砂糖をまぶした菓子パンを食べたのが原因ですが…なんでアンナは手を洗わなかったんですかね(笑) アンナは夕食後に食器を洗っているのでその時に手を洗えばよかったはずなのですが・・・。 それに湿地の水で手を洗うという手段もあります。アンナちゃん・・・ひょっとして汚くても平気な子・・・つまり汚ギャルなんですかね?*1


 まぁそれはいいとして、ここからマーニーはアンナの気分を害する言葉を3連発します。

・あんたの手ベトベトよ!(自分の手を洋服で拭きながら)
・あんた家がない子?(原作では"ジプシー"という言葉を使ってたようですが、角川版は「家のない子」という表現が使われていました)
・私、村の子と遊んじゃいけないの。


 原作のマーニーは思ったことをズケズケと言うタイプのようです。この言葉でちょっと不機嫌になったアンナ。「まあ、べつにいいんだけどね」というマーニーに背を向け「無理することないよ」と言い放ちます。


 ここまでの描写を見ると映画と原作では初対面の印象が大分違いますね。映画ではすぐに仲良くなったのに対して、原作ではギクシャクした雰囲気からのスタートになっています。


 でも、ここからマーニーの猛アタックが開始。

・「私あなたのことが知りたい!」
・アンナを脇にひきよせる。
・アンナの肩に手をおく。
・アンナと身をよせあう。
・アンナの腕をぎゅっとつかむ。
・手をにぎりあう。
・片腕をアンナの腰にまわす。
・「ボートはあなたの為に置いておいたの!」
・「これまでもアンナのことをずっと見てた」
・「あなたは私の秘密よ」
・アンナの頬にキス


 さすがは大英帝国。かなりスキンシップが多めな印象です。このアタック(?)に参ったのかアンナはすっかりマーニーに夢中になってしまうのでした。


 ところで、ネットで映画の感想をいろいろと読んでいると「杏奈はマーニーとはすぐに仲良くなったのに、信子には酷いことを言ったのはなぜか?」という疑問を良く見かけました。


 自分としては、映画の信子は「輪の内側から、外側にいるアンナを興味深く見ているだけ」だと杏奈からは見えたのではないかと思います。


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それに引き換え、マーニーは自分から輪の外にいる杏奈の側に来ていますよね。


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この違いが大きいのかな、と思いました。


つづく

*1:汚ギャルって・・・(笑)