思い出のマーニー 感想と考察 18 (読書感想3~4章)
※以下、ジブリの新作アニメ「思い出のマーニー」のネタばれが含まれています!!※
第3章 船着き場で~第4章 古い屋敷
ミセス・プレストンに手紙を出すため、郵便局に行くアンナ。そこで物語後半で再登場するリンジー家の人々を見かけます。アンナは思わず「ふつうの顔」をして身を隠しますが(?)幸運にもリンジー家の人々は道に止めてある車に乗ってどこかへ行ってしまったのでした。
ここで少し「ふつうの顔」について説明があるのですが、物語冒頭のミセス・プレストンとの別れを思い出したアンナは
角川版 P28
あのときは「表情のない顔」をつくって自分を守るしかなかったものだ。
と思っています。あの場面のアンナは意図的に「無表情」を作ったように読めますね。とするとミセス・プレストンがそれを「無表情」と受け取ったのは自然なことだったわけです。
そしてこの直後にアンナは「湿地屋敷」を発見し「これこそ自分がずっとさがしていたものだ」と感じます。
湿地屋敷の窓が1つだけ開いていると書かれているのですが、とするとこの窓を開けたのは物語り後半で湿地屋敷に住むリンジー家の人々か、もしくは湿地屋敷の売主でしょう。
湿地屋敷について目に付く表現があるのですが
角川版 P32
アンナはあこがれを胸に屋敷をみつめた。たしかで、いつまでも変わらない屋敷を。
角川版 P42
あそこになきゃおかしい。もしなかったら、もうたしかなものなんてどこにもない・・・なにもかも、わけがわからなくなる・・・。
この「たしかなもの」という表現が、壁にかかっている刺繍の「よきものをつかめ(Hold fast that which is good)」という言葉と錨の絵を思い起こさせます。
アニメのポパイが腕に錨の刺青をしていますが、あれは船乗りがする伝統的な刺青で「Hold fast」という文字が添えられていることが多いようです。つまり「ロープなどをしっかりつなげよ!しっかりと固定しろよ!」という船乗りの自戒の意味をもつ刺青です。錨のマークには「大西洋を航海したことがある船乗り」という意味もあるようです。
一方で聖書には別に「We have this hope as an anchor for the soul」という有名な文もあります。つまりキリスト教的感覚だと錨 = 希望であるようです。*1
そしてその2つが結びついて
- Hold fastといえば錨
- 錨と言えば希望
という連想があるようです。Hold fastで検索すると刺青の画像が沢山出てくるのですが、「We have this hope as an anchor for the soul」が添えられているものが散見されます。
つまり「たしかなものをもっていないアンナ」というイメージは「希望をもっていないアンナ」という暗喩なのでしょうか?
物語後半に錨を盗むのは、確かなもの、つまり希望が欲しかったから?もしかしたら考えすぎかもしれませんが、そういうことを考えました。
ところでアンナがペグ夫妻に
角川版 P35
と質問してペグ夫妻に「ぽかーん」とされるシーンがあるのですが、アンナはかなり天然が入っている映画版よりも若干幼い印象を受けます。
*1:かなり適当ですが・・・