思い出のマーニー 感想と考察 15 (別れのシーンの解釈)

※以下、ジブリの新作アニメ「思い出のマーニー」のネタばれが含まれています!!※


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別れのシーンに必要なもの


前回、別れのシーン前後の杏奈の心の変化について、以下の疑問点をあげました。


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しかし、マーニーとの別れの後、杏奈の3つの苦悩は全て解消されたように思えます。もしそうであるならば、マーニーとの別れによって、この3つを同時に解消するような「何らかの変化」が杏奈の心になければなりません。


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「マーニーの謝罪によって杏奈が祖母を許せた」とか、「杏奈の許しによってマーニーが成仏できた」という解釈にも問題は無いのですが、それだけでは杏奈の心情を説明するのに少し足りない気がします。


または、もうちょっと大雑把に「マーニーのを知って杏奈がなんとなく寛大な気分になった!」という解釈でも良いのですが、ここではもう少し考察を進めたいと思います。

あのシーンは「許し」なのか?


Yahooの辞書で「許し」を調べると、以下の様な解説が出ます。

2 (「赦し」とも書く)罪・過失・無礼などをとがめないこと。容赦(ようしゃ)。赦免(しゃめん)。

つまり"罪や過失の存在は認めつつも、これ以上はとがめません"ということになります。


あの別れのシーンを「許し」のシーンとして捉えると、杏奈の心の変化は以下の図で表現できると思います。


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つまり、自分を残していったことは依然として罪なのだけれど、それよりもマーニーへの愛が大きいのでマーニーをこれ以上は咎めない、という解釈です。


ただ個人的にはこの解釈はスッキリしません。というのは単に許すだけだと祖母やマーニーの行為が依然として大きく杏奈の心に残り続けてしまうからです。


また、「なんとなく寛大な気分になった!」説は以下の図で表現できると思います。


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太陽のようなマーニーの愛で、かすんでしまう養育費や輪の問題。


これもイマイチスッキリしません。というのは一見問題が見えにくくなってはいるのですが、それはそう見えるだけで実際には何の解決にもなっていないことになるからです。マーニーの愛で臭いものに蓋をしただけのように見えます。

では杏奈の心に何がおこったのか?


ちょっと前置きが長くなりました。


じゃあ一体杏奈の心に何がおこったのか?


私は杏奈の心のなかで価値観の大転換が発生したのではないかと思います。


それまで杏奈の心には、自分を残していった祖母と養育費を隠している頼子へのわだかまりが大きな比重を締めて存在しました。絵にすると以下のようになります。


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杏奈の心の中にも、祖母や頼子を愛する心はあります。しかし、わだかまりの方が大きくて素直に愛することはできないという状態です。


しかし、マーニーとの別れによって、杏奈の心の中で大きな変化がありました。


杏奈は、「残された」とか「養育費」とかがぶっちゃけどうでも良くなったのです。


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価値観が変わったことにより、それまでにもあった杏奈の祖母や頼子への愛のウェイトが大きく上昇し、逆に心のわだかまりが小さくなったのです。そしてそれを引き起こしたのがマーニーです。


実は私、マーニーを愛するがゆえにこんな本を購入してしまいました。


映画の初期設定など、いろんな情報がてんこ盛りで大変素晴らしい本です。*1


この本には映画のセリフが全て記載されているので、別れのシーンのセリフを以下に引用します。

マーニー「ああ・・杏奈・・・あたし・・もうここからいなくならなくてはいけない」
マーニー「あなたにさよならしなければならないの」
マーニー「だからねえ杏奈お願い、許してくれるって言って」
杏奈「・・・もちろんよ!許してあげる!あなたが好きよ!マーニー!」


このシーン、なんだか不思議じゃないですか?


だって、杏奈は直前まで激おこぷんぷん丸だったのに、特に理由もないままマーニーを許しているように見えます。


それまでの杏奈の心を代弁すると以下のようになるかと思います。

私を置いて行くなんて、マーニーはひどい娘だ。絶対にゆるせない!!


しかし、以下のような変化が杏奈の中に起こったのではないかと感じます。

マーニーが私を置いていったことなんて、ちっぽけでどうでもいいことだ。
だってマーニーは私を愛してくれているから!


そしてこの価値観は、そのまま祖母や頼子への気持ちにも反映されます。

おばあちゃん私を残して死んだなんて、ちっぽけでどうでもいいことだ。
だっておばあちゃんは私を愛してくれているから!

おばさん養育費を受給しているなんて、ちっぽけでどうでもいいことだ。
だっておばさんは私を愛してくれているから!

*2


なぜこのような変化が杏奈の中で発生したのかというと、マーニーともう二度と会えないという直感が杏奈に再考する機会を与えたからだと思います。

このままマーニーを許さないこともできる。

でも、それって本当に重要なことなの?
でも、それで本当に後悔しないの?

だってマーニーを愛しているという気持ちのほうが、ずっと大切じゃない?
だってマーニーに愛されているということのほうが、ずっと大切じゃない?

本当に大切なものをしっかりとつかんで、杏奈!!


乙女チックに書くとこういうことではないでしょうか?


原作で何度も出てくる「良きものをつかめ」とはこのことなのではないかな?と思います。

実は杏奈は最初から魔法の輪に入っていた!


物語に出てくる魔法の輪。杏奈は自分はその輪のにいるとずっと感じてきました。


他人と一緒にいても輪のにいると感じ、どしゃぶりの雨をあびながらひとりぼっちで歩いていても輪のにいると感じる不思議な輪です。


ぶっちゃけこの魔法の輪ってですよね*3


他人と愛で繋がっていれば輪の内側にいると感じ、繋がっていないと思えば外側にいると感じる。


そして杏奈は、今まで気づかなかっただけで、実は最初から輪の内側にいたのです。そしてマーニーとの別れによって内側にいると気づいたのではないでしょうか。


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※今ではすこし考えが変わってきました。新しい解釈はこちらを参照してください。



つづく





思い出のマーニーとは編集


*1:注:私はジブリの回し者ではありません

*2:なんかこう書くとDV夫と別れられない女性のようにも見えますが…。

*3:言っちゃった・・・