思い出のマーニー 感想と考察 5 (マーニーは幽霊?幻想?本物?)

※以下、ジブリの新作アニメ「思い出のマーニー」のネタばれが含まれています!!※


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それにしても、マーニーは一体何者なんだったのでしょうか?幽霊?幻想?それとも?


誰もが最初に思いつくこと、それはマーニーは祖母の幽霊だった!ということです。

映画での描写


映画ではマーニーの不思議な描写が多々あります。

  1. マーニーの湿地屋敷は昼間は無人
  2. アンナが乗ったボートのオールが動かせなくなる
  3. マーニーがアンナの前にあらわれるのは、夜か幻想のなかのみ
  4. マーニーが崖から足を踏み出して、いつのまにか地面に着地しているシーンがある
  5. マーニーが登場するシーンでは、背後におどろおどろしい音が流れる
  6. マーニーの前では、大岩夫婦のことが思い出せなくなる
  7. アンナがマーニーのことを忘れてしまうシーンがある
  8. アンナがマーニーを部屋に誘うと、マーニーは湿地屋敷から離れられないと言う


うーむ、マーニーは一体何者なんでしょうか?なんだか幽霊のような気がします。
特に、マーニーが夜しか現れなかったり、湿地屋敷から離れられないのは、マーニーがまるで地縛霊であるかのような表現です。

原作での描写


では、原作ではどのように描かれているのでしょうか?原作でのアンナとマーニーの交流について、以下にリストアップしてみました。


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うーむ、映画ではマーニーとの出会いは全て夜または幻想らしき世界で「いかにも幽霊」的な印象を受けたのですが、原作では朝から夜までいつでも出会っており、特に時間制限はないようです。


また出会う場所ですが、原作では全て湿地の近くではあるものの屋敷から結構離れた場所まで行くことができるようです。


では他の点ではどうでしょうか?


原作では、次のような描写があります。


角川版 P78

ふたりは声をあげて笑い、おたがいにさわってたしかめあった。うん、本物だ。服は軽い絹みたいなものでできているし、さわった腕もあったかくてしっかりしている。どうやら女の子の方も、アンナがまちがいなく本物の人間だと納得したらしい。

角川版 P85

「あなた、幽霊みたいよ。そこに、そんなにじっと立っていると。アンナーアンナ、あなたって、まちがいなくほんとうにいるのよね?」(略)女の子はアンナのほっぺたにさっとキスをした。「さあ、これであなたがほんとうにいるってわかったわ。早くボートをおして。また幽霊にかわっちゃう前にね!」


原作ではマーニーとアンナがお互いに相手を「幽霊ではないか?」と疑っていますが相手に触ったり、キスしたりすることによって「相手が本物の人間だ」と納得している様子が描かれています。


ほかには以下の描写もあります。


角川版 P85

女の子が言ってくれなかったら、忘れるところだった。ということは、やっぱりあの子は本当にいるんだ!


ここでもマーニーが実在することが印象付けられます。


しかし一方で、マーニーが実在しないのではないかと思えるような描写も少なくありません。一番最初に読者が「あれ?」と気付くのは次の描写だと思います。六回目の出会い、キノコ狩りから帰宅するところのシーンです。


角川版 P154

「変な子だ!変な子だ」アンナに気づくなりサンドラがはやしたてた。「うちのお母さんが、アンナは変な子だって言ってたよ。浜辺でブツブツひとりごとを言ってるって。


サンドラというのは映画の信子(ふとっちょブタ)です。映画では少し大人びた言動でしたが、原作では意地悪な子どもとして描かれています。でもアンナ、ひとりでブツブツ言うなんて、なんだかちょっとアブない人のようですね。


あと不思議なのは次のシーン。アンナがペグ夫妻(映画の大岩夫妻)の事を考えると、アンナからはマーニーが、マーニーからはアンナがお互いに見えなくなってしまうという描写があります。


角川版 P100

アンナはもう一度試した。おじさんとおばさんのことを思い出さなくてはいけない。(略)ー いない。マーニーが消えた!(略)うしろの方から、マーニーのびっくりしたささやき声が聞こえてきた「アンナ!どうしたの?どこにいるの?」


この後も、ペグ夫妻についてアンナが「思い出せなくなる」描写が度々続きます。


あと不思議な描写としては、アンナとマーニーの話がかみ合わなくなるシーン。


角川版 P171

「忘れちゃった?これ、きのうわたしたちがここへ置いて行ったでしょ?」
「それはおとといの話じゃない。それとも、その前の日だった?」アンナは自身がなくなってきた。この花は少しも、しおれていないように見える。マーニーの言うことが正しいのかもしれない。

角川版 P171

けれど、同じことがまた起こった。約束の場所で何時間も待ったあげく、家へ帰る途中でマーニーがあらわれると、アンナは腹がたった。(略)「きょうは家をつくる約束だったでしょ?」(略)「約束なんてしていないわ。なにをそんなに怒っているの?」


ふしぎな描写ですが、これが具体的に何を示唆しているのかは、ちょっとわかりません。


ほかに気づいたのは、マーニーが湿地屋敷から聞こえるベルの音に気づいて食事の為に帰宅するシーンがあるのですが、その音がアンナには聞こえません。


ただしそれ以外は、このあとマーニーとの別れまで、特に不思議な描写はないようです。


ここまでをふりかえると、映画ではマーニーは幽霊のようでもあり、原作では実在の人物でもあるようにも幽霊であるようにも思えます。


マーニーが実在の人物であるばあい、考えられるのはアンナとマーニーが時空を越えて本当に出会っている・・・つまりタイムスリップ説です。


マーニーが実在することを証明する手段として、マーニーと別れたあともマーニーの痕跡が残っていれば、それはマーニーが実在するという証拠になりそうです。


真っ先に思いつくのが「パーティーでもらった花の代金をアンナが所持しているか?」ですが、作中ではアンナは代金の受け取りを拒否しています。


かわりにバラの花をもらうのですが、バラの花もマーニーと別れる直前に水の上に落としてしまい失ってしまいます。


唯一残るのが、マーニーがアンナの靴にさしてあげたシーラベンダーの花で、これはマーニーと別れたあともアンナの靴に残っているのですが、シーラベンダー自体はアンナがそのへんで採集した花なので、夢遊状態のアンナが自分で靴にさした可能性も残されています。

マーニーは空想の友達?


幽霊説タイムスリップ説ときてもう一つ残されているのは空想の友達説です。


つまり、すべてはアンナの妄想の世界、つまり夢だったという解釈です。


アンナは小さいころ、祖母のマーニーに育てられました。そして幼いアンナにマーニーが語った物語を、アンナは心の奥深くに記憶していました。


そして、湿地屋敷を見た時に、その記憶が蘇りました!


映画では、湿地屋敷を見た時のアンナの衝撃がありありと描かれていますね。原作でも次のような表現で語られています。


角川版 P30

そのとき、その屋敷が見えた・・・。
見えたとたん、これこそ自分がずっと探していたものだとわかった。

角川版 P31

屋敷を見つめていると、アンナの頭のなかにそんな絵が次々と浮かんできた。どれひとつとってもアンナの知らないことばかり。それとも、本当は知っていたのだろうか・・・?

角川版 P32

半分夢のような心地にひたっていると、前にもこれと同じことが起こったという不思議な感覚がひたひたとおしよせてきた。


じつは、原作のアンナも、マーニーと別れてからはマーニーを「空想の友達」として解釈しています。

思い出になっていくマーニー


リンジー家に出会うまで、マーニーはアンナの本当の友達でした。しかし、リンジー家と出会ってからはアンナのなかで変化が起こります。


角川版 P233-234

この前までは、マーニーが本物で、あの五人はそうじゃなかった。今では、あの五人が本物で、マーニーはちがう。それとも、変わってしまったのは、私のほうなんだろうか。


アンナは最初マーニーと出会うまえに、湿地屋敷を下見にきたリンジー家の人々を見かけています。その時、アンナは彼らを湿地屋敷の住人だと夢想するシーンがあったのですが、その後リンジー家の人々が姿を見せなくなったので「彼らは私の想像だった」と思っていたのです。


ここで、原作に登場する重要人物、リンジー家の人々を紹介します。

ミスター・リンジー
 リンジー家のお父さん。普段は仕事でいないが週末にやってくる。優しい人格者。

ミセス・リンジー
 リンジー家のお母さん。こちらもとてもやさしい人。

アンドルー
 リンジー家の長男。14歳くらいの大きな男の子。アンナを捕まえる。

ジェーン
 リンジー家の長女。金髪のおさげの女の子。かしこくて大人っぽい。

プリシラ
 リンジー家の次女。茶色い髪の女の子。アンナよりも少し年下。映画の彩香マーニーの日記を発見して、アンナをマーニーだと思い込む。

マシュー
 リンジー家の次男ジョークが好き。

ローリーポーリー
 リンジー家の三男。まだ赤ん坊で、家族全員から愛されている。


アンナはすぐにリンジー家の人々と仲良くなり、一方でマーニーのことは忘れて行きます。


角川版 P235

アンナは、今ではマーニーのことをほとんど思い出せなくなっていた。(略)でも昼のあいだは、マーニーは思い出のまぼろしでしかなかった−−−そして、すぐに、まぼろしでさえなくなってしまった。


どんどんマーニーのことを忘れていくアンナ。


角川版 P241

「見て、アンナ、すごいでしょ。この家にもともとあったの。ふつうのカウベルの二倍は大きいわ。入江の真ん中にいても聞こえるのよ。アンドルーが昨日試したの」
「入江の真ん中にいても聞こえるのよ」・・・ほんのつかのま、アンナは前にもどこかで、たしかにこの言葉を聞いたと思った。でも、どこで?・・・いつ・・・?思い出そうとすると、頭が真っ白になる。

このカウベルの音を聞いて、マーニーが湿地屋敷に帰っていくというシーンがあります。しかしもうアンナは思い出すことができません。ちょっと切ないですね。


マーニー再び


そんなある日、プリシラ(彩香)がアンナに何かを「砂浜においてきた」といいます。


角川版 P245

あなたのーあなたにつくってあげたの。いつもみたいにあそこに最後まで残って、見つけてくれると思ったんだ。きれいにできたよ」
「あした見るね」
「あしただと、なくなっている。満潮になったら、流されちゃうから」
(略)
「いったい、なんなの?」アンナはほほえんだ。
「あなたの秘密の名前」


映画を見た人はここでピンと来ますね。


角川版 P248

 砂浜に着いたときには、もう潮がかわっていた。空はくもり、砂浜はうす暗く人気がなくて、昼間にクリケットをしたまぶしい場所とはまったくちがっていた。ほかの女の子が砂の上に書いたものを見るためだけに、こんなところまで来るなんてばかみたい、とアンナは思った。それでも、来たかった。プリシラのことが好きだったし、自分と秘密をわかちあいたいと思っていてくれることが嬉しかった。たとえ、その秘密が子供っぽいものだとしても。
 水ぎわまで歩いていったとき、アンナはそれを見つけた。貝がらや海藻の切れはしがていねいに並べられ、ひとつひとつの文字を形づくっている。そうやって砂の上に書かれた名前は「マーニー」だった。


映画を見て、知ってはいたのですが、結構鳥肌のシーンです。幼いプリシラ(彩香)がなぜマーニーの名を知っているのか?


ここから再びマーニーについての物語が再開します。


ちょっとマーニーの正体からは離れてしまいましたが、マーニーの正体(祖母の幽霊か、幻影か、タイムトラベルか)については、後にまた考察する予定です。


つづく


思い出のマーニーとは編集