思い出のマーニー 感想と考察 2 (原作小説を買いました)

※以下、ジブリの新作アニメ「思い出のマーニー」のネタばれが含まれています!!※


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早速本屋さんに足を運んだ私。話題の新作映画ですし、どうせ原作小説は平積みになっているでしょう!


お?やはりありました!案の定、分かりやすく店頭に平積みされています!・・・あれ?2種類あるぞ!


その時本屋さんに置いてあったのは、角川文庫版と新潮文庫版でした。後から知ったのですが、どうやら岩波版もあるようです。


ふむ、よろしい。では読み比べて気に入った方を買って帰りましょう!


まずは角川文庫版の1ページ目。

 ミセス・プレストンはいつもの心配そうな顔で、アンナの帽子をまっすぐに直した。
「いい子でいるのよ。楽しんできてね。それから、ええと・・・とにかく日焼けして、元気に、笑顔で帰っていらっしゃい」片手でアンナを抱き寄せると、別れのキスをした。アンナがあたたかさと安心と愛情を感じられるように、という気持ちをこめて。
 でも、アンナはミセス・プレストンのそんな気づかいを感じとって、やめてくれないかな、と思った。気づかいなんかされると、ふたりのあいだに垣根ができて、自然なさよならが言えなくなる。ほかの子たちが楽々しているように、ごくあたりまえに抱き合ったり、キスしたりしながらお別れできたら、ミセス・プレストンはすごく喜ぶだろうに。かわりにアンナは、スーツケースをぶらさげたまま列車の乗り口の前にぎこちなく突っ立って、こう願っていた。わたし、「ふつうの顔」をしているといいけど・・・どうか早く列車が出ますように。
 ミセス・プレストンは、アンナの「ふつうの顔」-ミセス・プレストンに言わせると「表情の無い顔」-を見てため息をつき、もっとこまごまとしたことに気持ちを向けた。


ミセス・プレストンとは、どうやら原作でのアンナの義母(佐々木頼子)のようです。なるほど、原作では湿地へ出発する所から始まるんですね。


義母の愛情あふれる別れのキスに戸惑うアンナ。その気持ちを隠すために「ふつうの顔」をしようとするけれど、義母にはそれが「無表情」に見えてしまう。


アンナはとても不器用そうな女の子ですね。なんだか、とても良い感じの書き出しです。これは期待できそうです!


次に新潮文庫

 プレストン夫人は今日も心配そうな顔で、アンナの帽子をまっすぐに直した。「いい子でいるのよ。楽しく過ごしてね―それからね―そう、素敵に日焼けして、朗らかな顔で帰ってくるのよ」夫人は片手をアンナの背中にまわして、さよならのキスをした―アンナに、自分は優しく大事にされていて、何の心配もいらないんだ、と思ってもらおうとして。

 でも、アンナには、夫人のそういう意図がはっきり感じ取れて、そんな必要はないのに、と思ってしまうのだった。それでかえって2人の間に垣根ができてしまい、ごく自然にさよならを言うことができなくなってしまう。それさえなければ、他の子供たちが気楽にやるように、こちらから無意識に抱きついてキスをするのに。それこそはプレストン夫人が心から望んでいることだっただろう。でも仕方がない。アンナは、客車の乗降口に、身を固くして立っているしかなかった。片手にカバンを持って、どうか自分がつまらなさそうな顔をしていますように、早く列車が動き出しますように、と願いながら。

 プレストン夫人はアンナの"つまらなさそうな"顔を見て― 夫人自身はその顔を"無愛想な顔"と思っていたのだけど―ついため息を漏らしてから、もっと現実的な事柄に注意を向けた。


ふむふむ。同じ原作なのですから、当然同じ内容です。でも・・・あれ?一つの違いに目が留まりました。


角川版では、アンナは「ふつうの顔」をしようとしているのに対し、新潮版では「つまらなさそうな顔」と訳されているのです。


果たして、アンナは「ふつうの顔」をしようとしているのか「つまらなそうな顔」をしようとしているのか!?


私は直感的に前者であろうと思い「ふつうの顔」つまり角川版を選択しました。


ふつうの顔をつくろうとするアンナ。けれど上手にはできずに、他人からは「無表情」だと思われてしまう。・・・なんだか少し切ない気分にさせられます。


これが「つまらなそうな顔」をしようとして、それが「無愛想な顔」に見えるとなると


・・・なんだか意味がちょっと分かりません。「つまらなそうな顔」「無愛想な顔」と似たような意味ではないでしょうか?


客観的に見ると、アンナの顔は無愛想、つまり「つまらなそうな顔」をしています。だから新潮版は気をきかせて「つまらなそうな顔」と訳したのでしょう。


意味としてはあっていそうです。


でも、アンナがつくりたかったのは「ふつうの顔」・・・上手にはできないけれど。


私はそう思いました。*1


ちなみに、各出版社のマーニーをここで立ち読みすることができます

角川版
http://www.kadokawa.co.jp/bunko/bk_detail.php?pcd=321405000137

岩波版
http://www.iwanami.co.jp/.PDFS/02/3/0259730.pdf

新潮版
http://www.shinchosha.co.jp/book/218551/

本を買うならば、気に入った翻訳のマーニーを買うのが良いでしょう。


つづく


思い出のマーニーとは編集

*1:この箇所は原文では'hoping she looked ordinary'と書かれています